ニュースの概要

ソウル市は、老朽化した低層住宅地を建て替える「モアタウン」事業に、統合計画という新しい制度を取り入れると発表した。市と区が住民と一緒に管理計画をつくり、その裏で事業組合の設立準備も並行して進める。候補地を選ぶ段階から住民の同意書を集められる点が大きな変更である。市は2030年までに候補地を100か所選び、候補地の選定から着工までの期間を、従来の約6年から4年半へ縮める目標を示した。事業の速さと住民参加を両立させる試みとして、都市再生に関わる人々の関心を集めそうだ。

引用元: ソウル市、低層住宅地域の再開発で統合計画を導入(Aju Press)

分析・見解

手続きの順番を入れ替えて、待ち時間そのものを減らす

従来のモアタウンは、手続きが順番に進んだ。まず候補地を選び、次に管理計画をつくり、そのあとで組合の設立に向けた同意集めを始める。各段階が終わるまで次に進めないため、待ち時間が積み上がる。今回の統合計画は、この順番を崩す。管理計画の策定と組合の設立準備を同時に走らせ、同意書も候補地の選定段階から集める。約6年を4年半にする、つまり1年半(約25%)の短縮は、工事を速くするのではなく、待ち時間を減らすことで生み出す設計だ。

同意を早く集めるほど、住民の迷いも早く表に出る

一方で、早い段階で同意書を求めることには危うさもある。まだ計画の中身が固まっていない時期に、住民は何に賛成するのか判断しにくい。のちに設計や費用負担が変われば、同意を取り直す手間が生じる。韓国の再開発では、住民間の対立や費用負担をめぐる争いで事業が止まる例が少なくない。同意の質を保てるかが、短縮目標の達成を左右する。市と区が住民と共同で管理計画をつくる仕組みは、この情報不足を埋める役目を持つ。

100か所という数字が示す、量で攻める都市政策

2030年までに候補地100か所という目標は、1年に直せば相当なペースである。小さな低層住宅地を一つずつ手当てするため、1件あたりの規模は大きくない。そのぶん、審査や調整を標準化できなければ、行政の人手が先に尽きる。統合計画は、手続きを型にはめて量産するための道具でもある。短縮の効果は、件数が増えるほど大きくなる。仮に100か所すべてで1年半を縮められれば、延べ150年分の待ち時間が消える計算だ。大規模な高層団地を一気に建て替える手法に比べ、街並みや人間関係を残しやすい利点もある。

日本の再開発と比べて見える、行政の関与の深さ

日本でも、市街地再開発事業や老朽マンションの建て替えでは、合意形成に年単位の時間がかかる。大きな違いは、行政の関わり方だ。日本では事業の主役は組合や民間事業者で、自治体は補助や認可で支える立場が多い。ソウル市は計画づくりの段階から市と区が前面に出て、住民と並んで走る。住民、市、区が各地区の推進に関わる枠組みも示されており、責任の所在を共有する姿勢がうかがえる。ただし行政の関与が深いほど、担当者の異動や予算の変動が事業全体に響くという弱点も抱える。

ビジネスへの影響

日本の不動産・建設会社が今から確認したい三つの点

韓国の動きは、そのまま日本に持ち込める話ではない。それでも、実務の見直しに使える点がある。第一に、合意形成の工程を直列から並列へ組み替えられないか。たとえば権利者への説明会と概略設計を同時に進めるだけでも、半年単位の差が出る。第二に、同意を求める時点で示せる資料の質。費用負担の目安や工事中の仮住まい案を早く示す会社ほど、住民の信頼を得やすい。第三に、行政との役割分担を最初に文書で決めておくことだ。

小規模案件を数多く扱う体制をどうつくるか

モアタウンのように小さな地区を大量に扱う政策では、設計や見積もり、住民対応を型化できる事業者が有利になる。1件ごとに職人技で進める会社は、件数が増えると回らなくなる。説明資料の雛形、同意取得の進捗管理、費用の概算ツールなどを共通化しておくと、案件が増えても品質を保てる。日本の地方都市で進む老朽住宅地の再生でも、同じ備えが役に立つ。投資家や金融機関の側は、事業期間が短くなるほど金利負担が減る点を見落とさず、計画の短縮が収益にどう効くかを試算しておくとよい。

短縮目標を鵜呑みにしないための点検項目

最後に注意点を挙げる。短縮目標は行政の見込みであり、実績ではない。海外の再開発案件に関わる企業は、2030年までに実際に何か所が着工したかを定期的に確認し、遅れが出る地区の特徴を把握したい。同意書の撤回率や、計画変更の回数も有益な指標になる。数字が良いうちに参入し、悪化の兆しが出たら手を引く判断基準を、あらかじめ決めておくことをすすめる。

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