ニュースの概要
大規模修繕工事の発注をめぐり、国内42社が入札談合に関与していたとする報道が明らかになった。管理組合が複数の業者から見積もりを取り、比較検討したうえで発注先を決めたはずの工事で、実際には受注する会社が事前に決まっており、他社の見積もりは体裁を整えるためだけに用意されていた実態が指摘されている。区分所有者から徴収した修繕積立金を原資とする工事だけに、発注プロセスの不透明さは住民一人ひとりの負担増に直結するうえ、総会での合意形成をいっそう難しくする問題として受け止められている。今回の摘発は氷山の一角との見方もあり、業界慣行そのものへの疑念が広がっている。
引用元: 日本企業42社、マンション管理組合向け入札談合で摘発報道(Japan Times)
分析・見解
管理会社が「窓口」を独占する構造こそが談合の温床
多くの管理組合は、大規模修繕の発注先探しを管理会社(=マンションの日常運営を代行する会社)に任せきりにしている。管理会社が声をかける工事業者はいつも同じ顔ぶれで、しかも工事を発注した業者から管理会社へ紹介料やバックマージン(=非公開の謝礼金)が流れる慣行が一部で続いてきた。今回の42社摘発は、この「紹介する側ともらう側が同じ」という構造上の弱点を突かれた結果とみるべきで、個々の担当者のモラルだけの問題ではない。国土交通省は工事の発注に関して管理会社が受け取る紹介料等の開示を求めるガイドラインを示しているが、開示は自己申告に委ねられており、罰則を伴う実効性のある仕組みにはなっていない。
見積もり3社並べても中身が同じなら比較にならない
相見積もり(=複数業者に見積もりを取り比べること)を取っていても、声かけから資料作成まで同じ管理会社が仕切っていれば、他社の見積もりは最初から「当て馬」として用意されているケースが少なくない。理事会が数字の合計額だけを見て承認してしまうと、工事範囲や仕様の違いに気づけず、実質的な競争は起きていなかったことになる。たとえば足場代や防水材のグレードといった項目ごとの内訳が業者ごとに揃っていなければ、専門知識のない理事が総額だけで比較するのは実質的に不可能に近い。
第三者管理者方式の普及が新たな利益相反を生みかねない
近年、高齢化や役員のなり手不足を背景に、理事会業務そのものを管理会社に委ねる第三者管理者方式(=管理会社が理事会に代わって意思決定する仕組み)を採用する組合が増えている。発注の判断権まで管理会社に集中すると、チェック機能を担うはずの住民の目がさらに届きにくくなり、今回のような問題を防ぐ仕組みが逆に弱まる懸念がある。実際、管理業界団体の調査でも第三者管理者方式の採用棟数はここ数年で急増しており、便利さの裏側でガバナンスの空白が生まれやすい局面にある。
摘発は氷山の一角、繰り返される構図に業界全体の見直しが必要
マンション管理業界では過去にも同様の疑いが指摘されてきたが、摘発されるのは発覚した一部にとどまるとの見方が根強い。個別の企業を処分するだけでなく、発注の透明性を制度として担保する仕組みづくりが、業界全体の課題として問われている。実際、2010年代にも複数の管理会社や工事業者が絡む同種の摘発が報じられており、今回の事案は特殊な例外ではなく、構造的な問題が繰り返し表面化してきた延長線上にあると言える。
ビジネスへの影響
相見積もりは「発注元の分離」までワンセットで設計する
本当の競争入札にするには、声かけから仕様書作成までを管理会社任せにせず、工事コンサルタント(=管理会社や施工会社と利害関係のない技術者)に仕様の統一と業者選定を依頼するのが実務上有効だ。費用はかかるが、修繕積立金全体からみれば数%の追加コストで、不透明な発注による数百万円単位の上乗せを防げる可能性がある。見積書のフォーマットを統一し、外壁塗装や屋上防水など工事項目ごとに単価と数量を横並びで比較できる表を理事会に提出させるだけでも、数字合わせのための談合は格段にやりにくくなる。
契約前にバックマージンの有無を書面で確認する
理事会は、管理会社および元請業者に対し、紹介料や協力金など名目を問わず金銭のやり取りがないことを契約書に明記させ、開示を拒む相手とは契約しない姿勢を取るべきだ。国土交通省の標準管理委託契約書のひな形を参照し、開示条項を独自に追加する組合も増えている。違反が判明した場合は契約解除と違約金を科す条項をあらかじめ盛り込んでおけば、発覚後の損害回収にも道筋がつく。
第三者管理者方式導入時はガバナンス設計とセットで検討する
役員のなり手不足解消のために第三者管理者方式を検討する組合は、発注権限を管理会社に一任する前に、外部監査人の設置や複数年ごとの管理会社見直しルールを併せて導入し、チェック機能を手放さない設計にしておく必要がある。選任にあたっては管理会社本体からの独立性が高い監査法人や弁護士を起用し、任期や報酬を管理会社の意向だけで決めない仕組みにしておくことが、形だけの監査に終わらせないポイントになる。
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